奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス領域/データ駆動型サイエンス創造センター


作村研究室

計算生物学 Sakumura Laboratory

実験データの解析と生命現象の関係式の設計

Concept

私たちは、実験データを数理的に解析することで、生物機能と分子の間にある法則の導出を目指しています。
また、得られた法則と物理的条件に従って、生命機能を表す関係式を設計します。
こうした「制約の中でのデザイン」を楽しんでいます。
分子と表現型を定量的に関連付けることで、様々な物理量間のシステムとしての生命機能を解明します。

News
おしらせ

  • 190717ホームページをリニューアルしました。
  • 181215小山君がICONIP2018に採択され発表しました(link)。新規の特徴選択手法に関する研究です。
  • 180809NAIST池田研とのラボリトリートを行いました。
  • 180507新M1が加わりました。
  • 180418岩楯先生(山口大)との共同研究が Physical Review E に採択されました(link)。細胞運動時の基質の硬さ検知と運動方向に関する統計解析です。この数理モデルの論文を準備中です。
  • 180314山田達也さんの論文が Scientific Reports に掲載されました(link)。膜電位時系列から細胞内の分子反応経路を推定する手法の提案です。
  • 171106井上晴幾さんが加わりました。

Research Outline
研究内容

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number 01

多彩なシグナルによる
細胞機能の解明

HodgkinとHuxleyは、膜タンパクと膜電位からなるシステムを解明しました。この研究は、分子ではない実体がシステム要素となり得ること、化学反応でなくてもシグナルを伝達することを示しています。私たちは、様々な物理量からなる細胞機能のシステムの数理的解明を行っています。

神経形態の極性形成

神経細胞は複数の突起を持ちます。突起が発達すると、樹状突起と長い軸索といった極性のある形になります。神経極性を生む分子shootin1を中心に、極性形成の原理を数理的に解明しました。(Toriyama, et al, Mol Syst Biol, 2010)

神経細胞(左)と定量数理モデル(右)

人がつまずくのは、意図どおりの行動ではありません(お笑い志向でない限り)。力学的要因が、脳の指示どおりの行動をさせないためです。逆に、力学要素をうまく利用すれば、能力以上の運動ができます。

同じように細胞も力学的作用を受けて行動するはずです。ゆえに、顕微鏡で観察される細胞運動は、

  • 分子シグナル(=細胞の意図)が必ずしも運動に変換されていない
  • 力学的要因による運動の制約または促進効果が反映されている

とみなすべきです。

私たちはこうした観点のもとでメカノバイオロジー研究を進めてきました。その中で、細胞の「シグナル伝達」の概念を変える必要がありました。一般的なシグナル伝達は、生化学反応、すなわち化学ポテンシャルの移行です。神経極性では、輸送によってshootin1が突起先端に濃縮すると、クラッチ機構により化学ポテンシャルが力学エネルギーへ変換されます(Toriyama et al, Curr Biol, 2013)。力学エネルギーは突起を伸長させ、細胞突起の弾性エネルギーに変換されます。そして、突起の伸長はshootin1の濃縮の維持に寄与します。このように、極性形成は分子が最終決定をした結果ではなく、様々なタイプのシグナルによる「伝達ループ」の一側面とみなせます。

神経突起というソフトマターが変化するには力が必ず必要。力を生むエネルギーは分子からもらっているはず。細胞形状の変化は細胞内分子の動態を変化させるはず。

この発想は新しいわけでも奇抜でもありません。1952年にHodgkinとHuxleyが既に表現しています。彼らは、神経の活動電位発生がイオンチャネルと膜電位による相互作用の一側面として解明しました。イオンチャネルが全ての制御権を持ち、上意下達で膜電位変化を決定・実現しているわけではありません。HodgkinとHuxleyのように分子本位制から離れた視点で見ると、複雑な現象が意外とシンプルに見えるかもしれません。

細胞が様々な刺激に応答するという事実は、細胞が扱う情報は分子だけに限らないことを示します。また、研究者が注目する「細胞機能」は、俯瞰的に見れば細胞にとってもっと大きなプロセスの素過程に過ぎない可能性もあります。

形態形成のための細胞骨格の制御

私達の体に骨があるように、細胞にも骨格があります。細胞はその骨格を自由に変形することができます。私たちは、細胞骨格制御の主な分子であるRhoファミリー低分子量Gタンパク質(Cdc42/Rac1/RhoA)の活性データと細胞の動きを解析することで、細胞形態制御の原理の解明を目指しています。

Gタンパク質の生化学的役割については多くのことが分かってきていますが、いざ細胞形態との関係になると、不明な点が多々あります。これを調べるためには、Gタンパク質活性と形態変化の原因と結果を明確にする必要があります。私たちは新規の解析手法を導入して分子と細胞形態の因果関係を解析しています。

細胞運動のための力場制御

ケラトサイトという餃子のような形をした細胞は、基質を足場にして力を生まなければ餃子になれません。神経細胞も、基質から力を得なければ極性形成が困難です。つまり、細胞は骨格を変えても基質から力を得なければ形に反映できません。多細胞の形態形成と大きく異なるところです。私たちは、細胞の力を生み出すmyosinIIや牽引力のデータを解析することで、細胞運動の原理解明を目指しています。

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number 02

細胞と細胞群の連成による
組織形成

生体分子が様々な量とシステムを組む可能性を考慮すれば、細胞の集団化による組織形成においても、分子以外の多彩な「システム要素」と「シグナル」が考えられます。私たちは、細胞・組織間の多彩なコミュニケーションに基づく組織形成の原理解明を数理的に行なっています。

体節形成のための同調システム

細胞分裂しながら生物が形をなしていくとき、体の部位のもととなる体節が形成されます。体節とは複数の細胞のかたまりです。この体節を形成するために、哺乳類では細胞内の Hes7 発現量が同調して振動します。 たとえ何かの原因により発現の同調が崩れたとしても、次の体節を形成するときには既に同調を実現しています。この非常に頑健な同調の原理を数理的に解明します。

細胞集団形成のための細胞コミュニケーション

生物の器官形成のために、細胞が集団を形成する必要があります。その際に大事なことは、仲間の細胞と物理的に接着することです。物理的な接着過程を考慮して、細胞集団形成の原理を数理的に解明します。

力学的作用を考慮した血管新生

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number 03

生命機能のデータサイエンス

どんな研究も、徹底した実物の観察がなければ空想になってしまいます。また、観測データは、実験と数理が同じ土俵で議論できる唯一の「言語」です。私たちは、機械学習法や制御理論などを用いて、観測データの定量化、システム要素間の定量的関係の抽出、主要なシステム要素の抽出を行なっています。

基質変形データを用いた細胞の牽引力推定

細胞は形状変化を起こすために、基質との力学的相互作用を引き起こします。細胞運動を理解するために、この力学的相互作用を定量する必要があります。細胞による牽引力を推定するために基質の変形データを用います。しかし、基質の変形データとして、基質に埋め込まれたビーズの変位を用いるため、詳細な変形データを計測することはできません。私たちは、限られたデータに生物学的知見を加味すること(ベイズ統計的手法)により細胞の牽引力を推定しています。

呼気成分データを用いたヒトの病状診断

血中アルコール濃度を推定するために呼気が使われます。血中のアルコールが肺胞において抽出され、呼気に混ざって体外に排出されるためです。同様に、病気に関連する血中成分が呼気に混ざって排出される場合があります。私たちは、患者と健常者の呼気成分に対して機械学習法を適用し、呼気と計算機による診断の有効性を検証しています。

膜電位の時系列データを用いた細胞内分子経路同定

観測とは対象を直接計測できるものに限りません。計測したい量の情報が別の量に反映されており、なおかつその量が比較的計測しやすい場合は、「計測しやすい量」を「本来計測すべき量」に変換するのが一般的です(例:光の輝度⇒細胞内分子濃度)。計測困難なものとして、細胞内の分子シグナル経路があります。私たちは、統計的機械学習を用いて、膜電位という全く別の物理量から細胞内シグナル経路を同定する技術の開発を進めています。

Member
研究室メンバー

メンバー集合写真

  • 作村 諭一  
    准教授 saku[a]bs.naist.jp Research map

  • 国田 勝行  
    助教 kkunida[a]bs.naist.jp Research map

  • 山田 達也  
    研究員 tatsuya-y[a]is.naist.jp Research map

  • 笹川 郁子  
    事務補佐員

  • 櫻井 達也  
    M2

  • 城根 信吾  
    M2

  • 藤川 良祐  
    M2

  • 大井川 史帆  
    M1

  • 橋本 治樹  
    M1

  • 村山 毅  
    M1